「よく出来ました」 優しい眼差し。いやらしく持ち上がる唇。 ひとつの顔に相反する感情を浮かべたバーナビーに、否応無くそそられる。 「早くしろよ、バニー……」 「言われなくても」 ぬるんとはみ出した赤い舌先が、自らの唇を舐め上げる。 やっと食べられる、そんな雄の顔で見下ろされたら、どうしたって男の目の前で秘部が疼いてしまう。 ――ああ、早く食べて欲しい。ぞっとするような爛れた言葉を飲み込むのも、一苦労だった。 情欲混じりの視線を絡ませながら、勿体ぶった動作でバーナビーが上半身を傾けてきた。 自然と身体が折り畳まれるような体勢が苦しくて、しかし、熱の塊が秘部に押し当てられただけでどうでも良くなる。 「……凄い、ぱくぱくしてますよ、ここ……そんなに、欲しかった?」 きゅっと閉じられた秘部へ先走りを塗り込めるように回る腰がエロティックで、仰ぎ見る虎徹の喉が無防備に反る。 「う、ああ……っ、うっせえ……」 渇望が酷く、喉がカラカラだ。何度唾液を嚥下しても深呼吸しても疼きが治まらない。 シーツに頬を擦り付けて悶える虎徹を、昂揚確かなグリーンの瞳が見つめていた。 「……っ、あの、バニー、ちゃん……まだ、かよ……」 ただ性器を擦り付けるだけで、一向に挿入する様子の無いバーナビーを睨みつける。 「すみません。焦らすと可愛いから、つい」 「おっまえ……っ、んんっ」 常の生意気な様相で笑ったバーナビーに文句をぶつけてやろうと口を開けば、唇を塞がれた。 即座に侵入してきた熱い舌先に文句は全て溶かされ、あまい唾液を注がれてしまえば怒りは流されてしまう。 じゅるっとバーナビーの味を飲み干し、誘われるがまま彼の口腔へ舌先を忍ばせた途端、凄まじい圧迫感が下肢を襲った。 「――っ、んんんぅっっ!!」 きゅっと窄められた肉を割り開く衝撃に、虎徹は瞳を見開いてくぐもった悲鳴を上げた。 前触れ無く始まった挿入についていけない。無意識に衝撃から逃れようとする虎徹を、バーナビーは逞しい体躯で押さえつけて阻止する。 膝裏を抱える浅黒い手に手を重ね、腰をふるい硬い亀頭を体内へめり込ませてゆく。 柔く解れていたそこは彼自身の精を潤滑剤にして、スムーズに奥まで導こうとする。 (来るっ、きちまうっ……バニーのが、奥までっ……) 軽く突き上げるような所作で、ずるっと粘膜を擦りながら奥へ迫りくる欲情の証におののく。とにかく圧迫感が強かった。 数え切れないほど咥えこんでいるとはいえ、バーナビーの太く長いペニスを受け入れる瞬間はきつい。唇を塞がれているが為に まともに呼吸すら出来ず、無理な体勢で男を受け入れる苦しさから眦に涙が滲む。 もがく虎徹をバーナビーは恍惚とした表情で見つめていた。蹂躙するかのような行為に酔いしれ、快楽でけぶるグリーンの瞳は恐ろしいほどに美しかった。 男本位で進められる行為に非難を込めて睨みつけようにも、視線を合わせてしまえば無体を許してゆける所まで堕ちて しまいたくなりそうで、結局は瞼を閉じて享受のポーズ。 熱杭にゆっくりとゆっくりと串刺しにされてゆく――残酷でさえある挿入が、散々擦られ熟している粘膜に新たな快楽を植えつける。 ふつふつと湧き上がる確かな快感に、中が蠢くのが判った。感じていた苦しみを凌駕する強烈な刺激が腰の奥に溜まり 虎徹は嗚咽のように震える喉元を晒して拓かれていく悦びに呻いた。 「っふ……全部、入りましたよ」 全てを収めきったと同時に、唇が解かれた。 尻にざりっとしたバーナビーの陰毛が当たり、言葉通り根元まで埋められた事を知る。 「っふあ、はっ、はあっ……」 胸を大仰に喘がせながら深呼吸を繰り返すたびに、キスの名残が渇いてゆく。 恐る恐る瞼を開けば溜まっていた雫が頬へ流れ落ち、恣意的に瞬きをして幾分はっきりとした視界の先、唇を噛み締めているバーナビーが見えた。 「……気持ち、いいんだろ……バーナビー……?」 意趣返しも込めてワザと名前を呼んでやれば、唇よりもさきに体内にあるペニスが震えた。 悔しそうに眉を顰めて歯噛みするバーナビーに少しばかり気が晴れる。 「俺も……」 それを言葉だけでなく、深く繋がっている場所で伝えたくて尻に力を込めた。ぎゅっと狭まる粘膜がバーナビーの形を浮き彫りにさせ 生々しい感触に疼きが走った。腹の下で鼓動を打つ性の源に、早く動いて貰いたいと唇よりもさきにねだる――互いに、身体の方が素直らしい。 虎徹とバーナビーは顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。 「っ、あぁっ、バニー……!」 和やかな空気も、バーナビーの腰が動き出せば瞬時に消えた。 粘膜に絡む精のぬめりが抽挿を滑らかにし、下方から響くはしたない水音が部屋の空気を一気に淫靡なものにする。 次第に勢い付く交接。頭上から降ってくる荒々しい吐息と同等の淫らさが虎徹の唇からも溢れて止まらない。 「虎徹さん……気付いてないと思いますけど、僕の乳首を触る指……まんま僕の、コピーでしたよ」 「ああぁ……っ! んあっ、ああっ……んなの、しらね……よっ、んあっおまっ、急に、奥っ、やめっ……!」 爛れきった肉襞を強く擦った果てに、ぐっと最奥まで達した切っ先が虎徹の弱点を抉った。 強烈な快楽の一閃が身体中を巡り、甘い痺れが収束に向かう間もなく次の摩擦が与えられて、まともに抗議出来ない。 「ああ、これが好きなんだなと、嬉しかったんです……あなた、身体は素直だけど、口は意地悪だから言ってくれないし」 足を抱え上げられたまま押し潰すように穿たれるたび、勃起した自身の先端から漏れるねばりがびゅっと飛び散り色濃い肌を汚した。 「ああっ、んんっ……ああっ、ばに、ばにぃっ……!」 はくはくと開く口元は、呼吸よりも沢山の喘ぎ声を吐き出してゆく。羞恥を感じる余裕は無かった。内部をめちゃくちゃに荒らす遠慮のなさがたまらない。 常にないバーナビーの、欲望をストレートにぶつけて来るセックスが気持いい。拾いきれない膨大な快楽の波間に放り出されて揉みくちゃにされた。 時に深く浅く、緩急をつけて埋め込まれるペニスは更に体積を増し、中をみっしりと満たしながら擦り上げる。 的確なバーナビーの責めを受け止め、嬌声を零し震えるしか虎徹には出来なかった。 「ねえ、こてつさん……これ、好き?」 興奮で掠れきった囁きが肌を濡らしたかと思えば、背を丸めたバーナビーに胸の頂きを噛まれた。 「あああっ! ああっ、やだばに、いたいっ……やめっ、やめろって……っ!」 歯で挟み、ぎりりと噛み締めながら引っ張るバーナビーにつられて胸が浮いた。 確かな激痛。しかし男に拓かれ慣れた身体は痛みの奥に沈潜する悦びを知っている。 性に貪欲な身体が痛みすら悦楽に換えて、余す事無く啜り味わってゆく。 「その割りに、ここ……すごい、締め付けて、きますよ……っ」 すごいすごいと、何度も淫らを悦んではがむしゃらに腰をぶつけてくる。自分でも判った。バーナビーのペニスを離すまいと締め付け 更なる快楽を身体が望んでいることを。硬い切っ先で敏感な箇所を確実に抉り、逞しく伸びる太い幹で締まる肉を切り裂く抽挿は 派手な音を部屋に撒き散らしながら絶頂へ押し上げようとする。 「ねえ、好きでしょう? 乳首、噛まれてしゃぶられるの、好きでしょう、虎徹さん」 下肢で揺れるペニスにも負けじと勃起し腫れた乳首を、バーナビーはしつこく噛み締めながら尚も問いかける。 「ああっ、お、まえっ、しつこいって……んああっ!」 揺さぶられながら潤む瞳で胸元を睨みつければ、ちょうどバーナビーと目が合った。同じ欲情を湛えた瞳が挑発的に細められる。 突起を咥えながら「虎徹さん」と囁き、唾液と共にどろっと吐き出された乳首は糸引き、淫らな輝きを放っていた。 愛された事を誇るように赤く勃起したそれが、唇からぬらりと這い出てきた舌先に絡まれ、形を辿るように乳輪ごと舐められる。 「んう…っ、いや、いやだって……っ」 あまりにも卑猥な光景だった。乳首に与えられる甘い刺激と相俟って、昂ぶる身体には酷い毒だ。 押さえ付けられた身体で唯一自由な首を振って、やめろと髪を振り乱す。 「嬉しい、癖に……乳首が好きなの、知ってますよ」 バーナビーは虎徹から視線を逸らさない。小さな反応をひとつでも見逃すまいと、グリーンの瞳が虎徹を縛る。 徹底的に乳首をいたぶるつもりなのだろう。腰の動きを急に緩やかなものにして、弧を描く唇から舌を出して舐めしゃぶってくる。 先の小さな窪みに舌を押し付け、奥から伝い落ちる大量の唾液が乳首だけでなく平らな胸までをも汚してゆく。 鎖骨に向かって流れる前に再びずるっと啜られるようにして口腔へ招かれ強く吸われた。 「ああっ、いやだっ、ばにぃっ!」 皮膚が千切れ喰われてしまうんじゃないかと思うほどの刺激だった。 ちらりとも伺えない赤い口腔内であやされ、時に吐きだされた乳首が目の前で淫虐に晒されるシーンを見ている事しか許されない。 「ん……虎徹さんの乳首、こりこりしてて美味しい。あなたの乳首なら、ずっとしゃぶっていたい」 ちゅぽっと乳首を吐き出して、胸に頬擦りしながら耽溺する表情で哂うバーナビーに、ぞっとした。目が本気だった。 彼が望む言葉を口にしないしない限り、虎徹をいたぶるのは止めないだろう。 「んうう……っ、うあっ……おまえ、最悪……っ!」 「何とでもどうぞ。どこもかしこも厭らしくて美味しいあなたが悪い。僕は毎日誘惑されっぱなしで、我慢するのもしんどいんですよ」 自覚ないでしょうけど、悪びれた素振り無く乳首に口付ける。ちゅちゅっと可愛い音を立てて繰り返されるキスはまるで幼子に するかのような他愛ないもので、濃厚なセックスに耽っている今は逆に居たたまれない。 快楽に狂ってさえいれば、それすらも絶頂への手引きになったというのに――。 「ひでえ、よっ……なんつー、えぐいやり方、すんだ……っああっ!」 「あなたの全てを見たい、あなたの全てを愛したい、それだけです……」 苛立ちの中に響いた、切実な言葉。されど、仰ぎ見たバーナビーは淫猥な表情のままで、いたぶる愉悦に浸っている。 甘いキス、もう片方の乳首は指先で優しく弾かれ、熟した粘膜を苛む緩い突き上げ、そして感涙で濡れそぼったペニスはほったらかしで―― さっきまで強い快楽を得ていただけに、じわじわと炙られる快感じゃ物足りなかった。 脆弱で欲しがりな粘膜をねっとりと犯すバーナビーだって同様の苦しみを味わっていることは、嗜虐に酔う表情のなかにあるから判る。 たっぷりと快感を与えておいて、性質の悪い責め方で焦らす彼が許せなかった。 求めている物は二人一緒なのに、目前にして何で我慢しなくてはいけないのか。誰にも許したことのない、バーナビーだけしか知らない 奥深い場所で、どれだけ彼を熱望しているのか知っている癖に。バーナビーの強過ぎる欲望の震えすら、腹の奥で知っているというのに。 恋人にしか許し合わない場所が時に言葉よりも饒舌に、情熱的であることをお互い判っているだろうに。 「っ、おまえっ……、いい加減に、しろよ……!」 もう耐え切れなかった。限界だった。なりふり構っていられるような所には、既にいない。 身体の上で余裕ぶった振りをしている男を欲でけぶる瞳で睨みつけながら、逞しい性器を力いっぱい締め上げてやった。 「っ、こてつ、さん……!」 「あああっ……!!」 同時に悶えた。性器にびったりと張り付くように狭めた粘膜が悦ぶように蠢き、頭上で顔を顰めた男を更に苦しめにかかる。 身体の奥深くで大きく震えたペニスの、まるで射精しそうな脈動に強烈なエクスタシーを感じた虎徹は、思わず達しそうに なるのをどうに堪えて快感に咽び震えた。 「あなた、ね。今、イくかと……!」 吐精をやり過ごしたバーナビーが舌打ちをして睨みつけてくる。 「お前が、焦らすから……だろっ! 知ってる、くせにっ……」 「判ってます、判ってるけど、聞きたいんです」 咎めるような強い突き上げが、虎徹の心を身体を貫いた。 「あっ、あっ、んああっ、ばに、ばにぃ……っ!」 「本当、身体は素直なんだから……虎徹さん。僕は、あなたの口から、聞きたい」 ぐっぐっと深く抉りこんでくる性器がパンパンに膨らんでいて、内部を隙間無く満たしてゆく。 凄まじい快感だった。腹にべったりと引っ付いているペニスがどろどろで、間近に迫る絶頂を感じ取って痙攣を起こしたようにぶるっと震えた。 「教えて、虎徹さん……乳首好きだって、僕に抱かれて、気持いいって、言って……!」 ぎゅっと眉根を寄せて吐き捨てた、哀願じみた言葉通りの表情に、やられた。 (んな、かわいい顔すんな、馬鹿っ……!) 欲情に飢えた雄の顔をそのままに、必死に縋ってくるバーナビーの透徹した瞳が虎徹だけを求めている。 重ねた瞳から言葉から触れた肌から、向けられる真摯な想いは偽り無く、焦げてしまいそうに熱かった。 泣きたいくらいの愛しさが溢れて苦しい。はっはっと喘ぐ口元から、想いが迸る。 「んあっ、好きだっ、好きだからっ……ばにぃ、一緒に、イきたいっ……!」 「虎徹さん……っ、僕もあなたの中に、出したいっ!」 くしゃりと嬉しげに顔を歪めて、バーナビーが腰を勢いよく走らせた。 口に出して認めて、初めて判った。バーナビーに抱かれるのが好きだ。もう抱く抱かれる、立ち位置なんてどうでもいい。 バーナビーが好きで好きでたまらない、どうしようもない愛しさが身体と結びついて快楽が一気に膨らんだ。 思いの丈をぶつけるように腰を打ち付けてくる彼に負けじと腰を揺すって、互いに性感を高め絶頂を求める。 「ばに、ばにぃっ! もっと、もっとしろ……っ!」 「くっ、締めすぎっ、ですよっ……もっと、あなたが欲しくなるっ……!」 足を掲げていた手を外され、真正面からきつく抱き合った。密着する肌がとてつもなく熱くて、それだけで絶頂に手が届いた。 二人の身体の間で揉みくちゃにされる男の欲望が、バーナビーが拓いた秘部を彼の性器で激しく穿たれるのが良くて良くて 虎徹は悦びに啜り泣きながら絶頂の許しを請う。 「っああっ、ああっ、イくっ、イくぅッ……ばにッ、イきたいっ!」 「イっていいです、からっ! 僕ので、イって……ッ!」 「ひあああっ、ばにっ、もう……っ、あああっ!」 ずんっと一気に奥深く、前立腺を突き上げながら到達したペニスによって虎徹は絶頂を迎えた。 明滅する視界、あやふやになる感覚。身体に渦巻いていた熱情が外へ外へと放出される雄の快楽に嬌声が零れて止まらない。 背を撓らせ刺激に耐える虎徹のペニスからは断続的に白濁が噴き上げて、二人の肌に卑猥な染みを作る。 「っ、こてつ、さっ……!」 縋るように抱き締めた先、頭上のバーナビーが息を詰めたと同時に切っ先が膨らみ、欲情が叩きつけられた。 奥を目指して幾度も吐き出される精は熱く、隅々まで満たそうと未だ硬いペニスが擦りつけられるたびにぐちゃぐちゃと酷い音が響く。 腹の奥で極め、濡らされる悦びはいつだって虎徹を恍惚とさせた。愛しく思う相手のものならば、尚更。 荒い息を整えるように呼吸を繰り返しながらも、濡れそぼつ瞳を重ねてしまえばまたすぐに欲しくなるのは判っていた。 「っ、はあっ、あぁっ……ばに、バニー、なあ……なあ」 絶頂からしがみ付いて離れない身体は昂ぶったまま、もう一度繋がることを望んでいる。 「僕だって、あなたが欲しい……こんなんじゃ、足りない」 まだ、終わりたくない――誘惑する瞳で見下げてくる男の吐息のせいで肌がふつふつと粟立つ。 「もっと、くれ……足りない、お前が欲しい……」 「もっと、欲しがって下さい……僕が欲しいと思うくらい、虎徹さんっ……」 収拾の付かない身体を押し付け合い、埋められたままのペニスを締め付けて潤みきった粘膜を擦られる。 相手が欲しいと、とろけた下肢を深く絡ませながら互いの頬を掌で包み込み、引き寄せるようにして口付けた。 この気持ちは言葉だけじゃ足りない。饒舌な舌先を吸い、一心不乱に腰を揺らして想いをぶつけあった。 それでも足りない分は、何度も何度も喰らって喰らわれ溶けてひとつになるまで、抱き合うまでだった。 ⇒続き