俺のバニーちゃん





「虎徹さん、ずいぶん熱心でしたね。今までこんな風にいやらしく触ってくれたことなんてなかったのに」  特に、ここ……とグリーンの瞳が見やった先は、唾液でべったべたにテカる乳首だった。  熱心に触れたせいでそこはふっくらと色付き、卑猥な形のままつんと上向いている。  漸くショックから立ち直ったというのに淫らな足跡を見せ付けられ、虎徹の頬が瞬時に染まった。 「む、無防備に寝てるお前が悪いんだろーが!!」  果てしなく気まずい。果てしなく恥ずかしい。  バーナビーはキスした時点で目が覚めていたという。積極的に振舞う虎徹が物珍しくて、高みの見物としけこんでいた彼に怒りは尽きない。  確かにバーナビーの言う通り、もう何度もセックスをしているというのに、自ら積極的に触れた事は今回を含めても片手で足りる回数しかなかった。  相手を想うからこそ足を開いて秘部を許す行為に、戸惑いや羞恥というものを未だ拭いきれないでいるから、つい尻込みしてしまう。  それに誘いをかけるのはいつだってバーナビーで、虎徹が触れたいと思うより早く限界を迎えるのも、若い彼が先だった。  正直な所、我慢のきかない彼に助けられた事も何度かある。虎徹だって男で性欲も枯れていない。自分から「欲しい」だなんて  どの顔をして言えというのか。既に心と身体はバーナビーに落とされているものの、彼に向けて認めてしまうのは何だか癪だった。 (まあ、もう格好つけるのも今更、か……)  嬉しそうに笑うバーナビーを見ていると、自分勝手なプライドやらに拘るのも馬鹿馬鹿しくなってくる。  いくら怒りをぶつけても「珍しくて」やら「可愛くて」と、堪えた様子を見せる所かデッレデレにやに下がった表情を見せるもんだから  早々に白旗を上げてしまうことにした。ここで意地になる方がみっともないうえ、自業自得だ。  こうなる事が予測できただろうに、欲求に負けて襲い掛かってしまった自分が全て悪い。   下着を脱がせてから深刻な表情を浮かべた虎徹が気になって狸寝入りをやめたのだと、バーナビーは長い笑いを引っ込めた。 「そんなに僕を抱きたかったんですか?」 「あー……」 「セックスが気持ちよくなかった?」  とグリーンの瞳を曇らせ、殊勝な表情で問いかけるから意地悪する気にもなれず、慌てて首を振った。  目に見えて安堵したバーナビーが片腕をベッドに沈み込ませたまま、伸ばした指先で虎徹の顎を撫でてくる。 「じゃあ、何で?」  顎のラインを辿る仕草は優しい癖に、逃げを許さない強さを孕んでいる。  言葉を引き出そうとくすぐる指先がむず痒くて頭を振るも、口を割るまでは許してくれそうにない。  「……お前が誰にも見せたことの無い姿を、見てみたかったんだよ」 「それが、アナルセックスですか?」  ……はっきりと単語を出すなっての。  虎徹は居たたまれなくなって、視線を彷徨わせた。 「それくらいしか、思いつかなかったんだよ、あん時は。悪いかよ」 「いえ。もう十分、あなたにしか見せていないのに。……独占欲なんて、僕の十八番だと思ってました」 「……俺だって、ちゃんとお前が好きだっての」 「判ってます。いつも、ちゃんと伝わってますから」  おずおずと視線を合わせた先で、バーナビーは唇を綻ばせた。 「ああ、そう……」 (んな愛されてる自信がありますって顔で笑うんじゃねー……)  普段の自分がバーナビーに対してどんな態度を取っているのか、怖くなる。 (きちんと向き合ってるのにまだ欲しいだなんて、俺も欲張りだよなあ)  恥ずかしいから口にはしないが、心内で嘆息する。  これまた恥ずかしいから絶対口にはしないが、胸に抱く想いがまっすぐバーナビーに伝わっている事が嬉しかったりする。  彼を独占したい、後生秘密にすると決めた嫉妬や独占欲は一日だって持たなかった。  だがバーナビーの笑顔ひとつでみっともないと思ったそれが誇れるものになるくらい、彼を想っているらしい――虎徹は表情を緩めた。 「ねえ、虎徹さん。……この先は、どうします?」  悪戯っぽく笑う顔は子供のようでいて、グリーンの瞳の中にあるのは確かな欲望。  あてられたようにくらりとめまいを覚える。 「決まってる、だろ?」  ここまで来れば後には引けないことを、互いに知っている。 「虎徹さんも苦しいでしょう? 脱がせてあげるから、こっちに来て」  ちらりと送られた視線の元、下着を押し上げる自身は重く張り詰めていた。  先っぽ、エッチな染みが出来てる……恋人から淫らな言葉と視線を浴びたそれが、ねだるようにふるっと震える。 「早く」  見惚れてしまいそうな笑みを浮かべて両腕を広げるのは、十以上も年下の男。  おじさん相手になんてことをしているんだとツッコめないのは、素直に従ってしまいたい自分がいるからで。  苦笑し、膝立ちでシーツを擦りながらバーナビーの側へ寄れば、待ちかねた腕に捕まりあっと言う間に胸の中へ落ちる。 「捕まえた」 「はいはい捕まりましたよ」  あまりにも嬉しそうに笑ってくるから、虎徹も腕を持ち上げて首に巻きつけた。  じゃれあうようにぎゅうぎゅうと身を寄せれば自然と近付く顔、期待に鼓動する心臓は密着しているバーナビーも同じだった。  顎を上げて今か今かと虎徹の到来を待つ唇にちゅっと触れる。  グリーンの瞳が細められ、足りないと重ねた唇をもごもご動かし強請ってくるのが可愛い。薄く唇を開いて誘いをかければ  息を吸うよりも早くぬるっと侵入した舌先。性急な欲を隠そうともしないバーナビーを受け止め、熱烈に歓迎してやる。 「っ、んん……っ、ふ……」  口腔で甘えるように戯れてくる肉厚の舌を自らのそれで捕らえ吸い上げた。柔い舌先に噛み付けばしなやかな体躯が細かく震える。  甘美な刺激に耐えたご褒美だとばかりに唾液を流し込むと、目下にある喉元が幾度も上下した。  唾液を啜るにつれてとろんと溶ける熱い眼差しが、互いの舌が重なり舐めしゃぶるたびに溢れる快感が身体を甘く蝕む。  肌の下をとうとうと流れては音も無く弾けて、感覚が鋭くなってゆく。 「っ、バニー……」  膝立ちの体勢が辛い。 「僕に、寄りかかって……」  バーナビーは虎徹のあやうく揺れる細腰を腕ひとつで支え、後頭部に回したもう片方の手で更なる深みを求めてきた。  ぐちゅと響いた水音を合図に、今度はバーナビーが舌ひとつで虎徹を翻弄しようとする。喉を圧迫しかねない程に奥の奥まで突っ込んできた舌が  粘膜を縦横無尽に這い回り、呼吸までをも奪う。彼特有の若々しい雄の欲を見せ付ける激しいキスだった。  歯がぶつかっても動きを止めず、逆に煽られたと柔い舌を硬く尖らせ暴れる。 「む、ん……っふ……ッ」  追いつくのがやっとで、追いついてもすぐに離されてしまう。それでもキスは甘い熱を生み出して、腰の奥で快楽を滴らせる。  せめて振り落とされぬようにと強く抱き締めれば、勢いよくベッドに押し倒された。大きく頑丈なベッドが二人を受け止めぐらんと撓み  不安定な口付けにしばし酔った。のも束の間、ごぼりと、大量に流し込まれたバーナビーの唾液で溺れてしまいそうになる。 「んんっ、ふぅっ……んっ、んんっっ!!」  苦しいと背中を叩いて抗議しても合間から漏れる吐息が甘いせいで、目の前の男を調子付かせる一方だった。  全ての物から遠ざけ強制的にバーナビーへと引き寄せるような荒いキスが好きなことを、知っているのだ。  逃げを許さない指先が顎を捉え、深く食らいついてくる。開かれたままの瞳が更なる淫らへ共に堕ちようと手招きしていた。  瞬きのたびに溢れる色情が見えない腕となって、虎徹の身体中を這い回ってゆく。  どこまでが自分でどこからがバーナビーなのか境目が判らない。  舌が戯れる熱い口腔がどちらのものかなんて、この状況で理性を働かせる方が無粋だろう。  辛うじて、バーナビーの手によって下着が取り払われたことだけは、燃えるように昂ぶる下肢の重なりで知った。 「ふぁ……っ、はぁっ……は……」  漸く解放された頃には、互いに息も絶え絶えな状態だった。熱い吐息が肌をねぶり、鳥肌が立ちそうだ。  口の周りはベタベタで、唇と唇の間にかかる唾液の束が呼吸のたびにぶつりぶつりと切れてゆく。 (やっぱ、えろい……)  重力に従い垂れてくる雫を舌先で拭った。頭の両脇に手を付いて呼吸を整えるバーナビーの視線を浴びながら、何度も何度も。  雄の顔した彼を挑発するように舌先をちらつかせれば、ぐっと秀麗な眉根が寄った。 「……悪い人だ」 「は……どうせ嫌いじゃねーんだろ」 「さっきまで恥ずかしがってた癖に」 「うるせ」  ふいと顔を逸らせば、バーナビーの鼻先が黒髪へ埋められた。 「ね、虎徹、さん」  余韻が残る舌ったらずな囁きが耳朶を舐める。 「舐めたいんですか?」  何を、なんて惚けることなど不可能だった。  タイミングよく、ぐちゅ、と下方から響いた水音で、無意識の行動に気が付く。  右手がバーナビーのペニスに触れ、物欲しそうに撫で回していた。  とめどなく溢れる先走りのねばりが指を汚し、なめらかな手淫を生み出している。最悪だ。 「――っっ!!」  声無き悲鳴を上げて、ぎゅっと瞼を瞑ってバーナビーの視線から逃れる。  咄嗟に右手を離そうとするも、バーナビーの掌に押さえられ叶わない。 「強がったと思ったら恥ずかしがって……可愛いな」  あなた、本当に年上なんですか? 吐息を浴びる耳が熱を帯び、目にも鮮やかな羞恥の色で男を悦ばせてしまうのも時間の問題だろう。  悔しいのに身体の反応を止める術を知らない。 「もうやだ本当やだバニーちゃん何なの!」 「それ、こっちの台詞です。どこまで僕を煽ったら気が済むんです」  会話の合間でさえ、バーナビーの手によって熱く弾けそうな勃起を擦り続ける。互いの掌に挟まれた太い幹の先端はたっぷり潤み  根元から頂上に向けて擦り上げるたびに興奮を飛ばし二人の手をしとどに濡らした。  そういえばこれを口にしたかったのだと、未だ羞恥の渦中にいる虎徹は思い出した。  意識した途端、一気に膨らむ欲望が羞恥を追い出しにかかる。ぐちゃぐちゃな心を明確な欲が解きほぐし、ひとつに繋げる。   ――欲しい。シンプルな本能が身体を占め、羞恥から呆気なく解放されてゆく。 「……でも、今日は舐めさせてあげない」  ゆっくりと、自らの意思で動き出した虎徹の手を、バーナビーはそっと剥がした。  非難を忍ばせた鳶色の瞳の際に、なだめるような口付けを落す。 「虎徹さん、僕を見て」  濡れた指同士を絡めながら瞳を重ね、浅ましい欲望を見せてと、甘い声で強請られた。  恋人同士なのだから恥ずかしい事はない、全てを見せてくれたら全てを受け止めてあげる、それはとても気持いいことでしょう――  毒々しい優しさが次々に耳へ流し込まれ、喘ぎめいた吐息が唇から迸った。  悶える身体につられ捩れるシーツが無数の皺を作り、バーナビーの唇を饒舌にさせた。  いやらしい。可愛い。エッチな僕の虎徹さん。もっと淫らになって僕を誘って。もっと、あなたを愛させて、僕を愛して。  恥ずかしい言葉を吐き続ける柔らかな唇は虎徹にとっていっそ暴力的ですらあるのに、甘い顔をして擦り寄る男の可愛さに、成すがままになる。 「っ……、なんつー……やり方、だよ……」  本当に、バーナビーは自分のことを判っている。抱かれる度に思い知らされる彼の想いによって、また恋に堕ちる。  なんてザマだと思う気持ちと確かな幸せがせめぎ合い、手を取るのはいつだって。 「……もーお前の、好きにしろ……」 「おおせのままに」  きざったらしく口元を緩めて、キス。  ちゅっと高いリップ音を奏で離れた唇の代わりに白い指先が差し出された。綺麗な指にたっぷり絡む体液、今にも垂れそうなそれは  照明にあてられ蜜色に輝いている。誘うように指先が蠢くと酷い粘着音を立てて糸を引き、淫らをみせつける。  舐めろという無言の催促に虎徹は唇を開き、濡れた人差し指を招き入れた。  唇を汚しながら押し入ってきた途端、口いっぱいに広がるのはさっき味わった先走りだ。疼きと共に這い上がる飢えに従って、舌を這わせる。 「やらしいな……」  ゾクゾクする囁きを肌に浴びながら、ずるっと人差し指を吐き出して、今度は中指に吸い付く。  濃厚なとろみがバーナビーの昂ぶりを如実に伝えてくるようで、彼の想いを欲望を全て嚥下したいという内なる欲求を擽って舌が止まらない。 「っ、ん……ふぅ……っ」  いつしか虎徹は両手でバーナビーの手首を捕まえ、舐め回していた。彼の味がなくなれば次の指へ移り、それを繰り返した果てに掌を舐めた。  熱い肉棒を一緒に挟んでいた掌は特に濃く、発情しつつある身体が目の奥が熱くなってきた。  いやしい水気を孕んだ鳶色の瞳が、指の向こうにあるグリーンの瞳を誘惑する。 「……僕のペニスをフェラチオしているみたいですよ……虎徹さん、美味しい?」 「っぅ……お前、若い癖に、時々おっさんくせーぞ……」  見せ付けるように、手首から指先まで一気に舐め上げる。  頂上で強く吸い付いて甘噛みしてやれば、どんな想像をしたのか、大腿に触れていた彼のペニスがびくんと大きく揺れた。  思わず笑みを浮かべた虎徹を、バーナビーは恨みがましい目で見やる。  「っ、虎徹さんがいやらし過ぎるんですよ……その口に、僕のをぶちこみたくなるくらいには」  普段ならば絶対口にしないような下品な言葉が、彼の余裕の無さを示していた。  欲望を隠そうともしない瞳が、このいやらしい男を頭から食らってしまいたいと言っている。 「……たまんねーよ、お前」  危うい欲望を前に、舌なめずりをする。普段は禁欲的なタイプだけに、ベッドの上でだけ欲を剥き出しにする様は、壮絶にいやらしい。  よく虎徹のことをいやらしい、淫らだと評するバーナビー自身だって、十分に男の欲を煽ってくれる。  どこもかしこも美味しそうで、むしゃぶりついてしまいたくなるのだ。  興奮がとめどなく溢れて息が浅い。はくはくと喘ぐように出し入れする空気よりも、今は男が欲しかった。  淫らであることを悦んでくれるのならば、今晩くらいは付き合ってやってもいい。  自分だってもう、逞しく膨らんだペニスを腹の奥まで突っ込んで貰えないと、治まりそうに無い。  とんでもない興奮に苛まれている身体、勃起している下腹部とその奥に潜む秘部が痛むほど疼いていた。 「なあ、バニーちゃん……来いよ」  こんな卑猥な身体にしたのは誰でもない、目の前の男だ。盛り上がった感情を鎮める責任がある。  そして、男の身体の中で渦巻いているだろう欲望を食らい受け止めるのは自分しかいない。  強い昂ぶりのせいで張り付く喉から言葉を搾り出して、今度は虎徹が腕を広げる番だった。 「抱けよ、もうお前が欲しい…」  男らしく筋張った首元に腕を絡めて引き寄せ、驚きで瞠るグリーンの瞳いっぱいに入り込む。  この距離で誘惑するのも、端整な面貌を間近から見つめることが出来るのも、自分だけだ。  ――俺だけのバニーちゃん。あざとい囁きで耳朶を撫でて、彼を煽ることが出来るのも。 「っ……! 後悔、しないで下さいよ……!」  悔しげに歯噛みしたバーナビーが強く抱きすくめてくる。骨が軋むほどの抱擁に呼吸すら出来ない。 「っ、おい、苦しいって……いてえッ!!」  流石にきついと背を叩けば、首筋に歯を立てられた。瞬間走った激痛に虎徹は呻く。  暴れる身体を物ともせず、肉に歯を突き立てる彼は容赦なかった。いくら虎徹が罵倒しても離れない所か、動くたびに歯が食い込むから  バーナビーの下で激痛を甘受し震えるしかない。咀嚼するように肉を揉み解しては見えない体液を啜る。  このままでは本当に食べられてしまいそうで、身の奥がざわりと恐怖でざわめく。 「……あなたが、悪いんです」  じゅっと噛み痕に吸い付いたのを最後に顔を上げたバーナビーに、射竦められる。 「これでも我慢して、今まで優しくしてきたのに」  うざったそうに金髪を掻き揚げる姿が男臭くて目が逸らせない。 (んなモン、隠してやがったのかよ……)  露になった額、その下では雄の欲でぎらつく瞳が堪えていたものを発露出来た歓喜に揺れていた。  ハンサムな面に潜んでいたのは、手のつけられない、どうにも操縦出来そうに無い猛獣だった。普段のとろとろに甘えて優しい男の面影など、ない、 「……お、まえ、ひでえ顔してるぞ……」  乾いた笑いを漏らした虎徹を、バーナビーは無言で見下ろす。  どう獲物を食らおうか、言葉無いまま視線で身体を撫で回している。  なんてものを挑発してしまったのか。されど虎徹の中に後悔はなかった。  これからどんな形で抱かれてしまうのか、さざめく恐怖も一皮向けば期待という昂ぶりが根底にある。無性に、興奮した。 「あなたが煽るから悪いんです。徹底的に抱いて、僕がどれだけあなたを好きか教えてあげますよ」  伸ばした指先が歯型の残る褐色の肌を撫で、すっと下方へ向かう。その間も、バーナビーは虎徹の目線を捕らえたまま離れない。 「っあぁ、っ……」  ゆっくりと焦らすように身体のラインを辿る指先が淫らな熱を生み出し虎徹を蝕む。  身体の芯から溢れる快感に身悶えするたび、バーナビーの指はスピードを落として肌を進んだ。なだらかな胸の間を、硬い腹筋の形を  確かめるように通り、勃起し濡れそぼるペニスを悪戯することなく素通りして、長い時間をかけて到達したのは尻の狭間だった。 「まだ柔らかい……それに、濡れてる。虎徹さんのここ、自ら濡れて誘ってるみたいですね」  秘部の表面をそっと撫でて、濡れ具合を教えられた。 「んっ……馬鹿じゃ、ねーの。後処理は僕の仕事だって言ったくせに、そのまま寝ちまうから、だろ……」 「そのおかげで、今すぐ抱ける」  先のセックスを覚えているそこはバーナビーの指先をすぐに飲み込める程にほぐれ、しっとりと潤んでいる。少しでも指が潜り込めば  精のこびりついた肉襞が埋めるものを求めて、卑猥に絡みつくのだろう。  未だやらしい性器であるそこを指の腹で何度も撫でて、時折ぐっと押し付けられる所作を繰り返され息が上がってゆく。 「ば、に……遊ぶな、よ……」  甘い愛撫では物足りない。挿入しそうでしない、じわじわと身体を追い詰める指先に焦れた虎徹は、金髪で隠されたうなじを撫でて先を強請った。  些細な接触で感じる身体は虎徹だけではない。うっすらと汗の滲む肌を引っかかれたバーナビーが息を詰める。 「……ええ、僕だって焦らされるのは嫌いです」  足開きますよ、掠れた声音で囁くと同時に強引な手指によって虎徹の両足が大きく開かれ、身体が割り込んできた。 「自分で膝裏持って、尻を上げて下さい」  自ら秘部を見せ付けるようなポーズをしろと、卑猥すぎる命令を下すバーナビーに最早反発する理性はないに等しい。 (うわ、すげえ勃ってんじゃん……)  上半身を起き上がらせてシーツに座り込んだ男の、隙無く鍛え上げられた腹筋の下で聳え立つペニスを見てしまえば逆らえなかった。  鳶色の視線に晒された性器は興奮を帯びて膨らみ、とろんとした先走りが筋の浮いた肉を根元で茂る陰毛を濡らしている。 「そんなに見つめられたら、出ちゃいますよ」  びくんと、力強い脈動をいちいち目で追ってしまう虎徹を甘く咎める。 「出すなよ、バニーちゃん。まだ挿れてねーんだから」  見つめるだけでいちいち反応する可愛い男を見るなだなんて、無理な話だった。  今だって、虎徹が見つめているだけで天を向いた先からまた一粒の雫がじわり滲んだ。本当に可愛くてたまらない。  際限ない愛しさに免じて、膝裏に手をかけた。そのままゆっくりと膝頭を胸元へ寄せていけば、足が宙に投げ出されると共に尻がシーツを離れる。  空をかく爪先が頼りなくて、無意識にぎゅっと指先を握りこんだ。  バーナビーの眼前へ全てを晒す体勢に羞恥を感じない筈など無かった。  今はもうそれ以上に、欲望が先行していてる。欲しい――浅ましい欲求を浮かべた眼差しで男をねっとりと見つめた。                                                                                    ⇒続き

 

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