アダルト





 たった一杯の酒がもたらした過ちというには若干リアリティがなく、よほど溜まっていたのかと考えるには無理がある。 「随分と私の上がお気に召したようですね、アームストロング少将殿?」 「ああぁぁッ……うる、さい……!」  とはいえ、彼女が私に跨る理由など、どうでも良かった。  深くペニスを喰らい豊満な乳房を揺らして喘ぐ姿はブリッグズの女王と恐れられるそれとは程遠く、貪欲に快楽を求める様は  売女以上に淫らで美しく圧巻だった。ベッドで横たわる私の腰を挟んで離さないむっちりとした肉感的な大腿の感触は極上。  吸い付くような白い肉を両の指で存分に撫で回してから軍人らしく引き締まった腰を駆け上がり、儚い柔らかさを誇る形良い乳房を揉めば  濡れた媚肉がキツく締まるほど感度も良好。お堅い軍服の下に完璧たる女を見事に隠していた少将に強い劣情を掻き立てられると共に、  この姿を見た者が過去にも存在するんだと思えば、見ず知らずの男に嫉妬すら抱いてしまいそうになる。 「痛ッ……! 乱暴にするなマスタング!」  気付かぬうちに強く乳房を掴んでいたのか、掠れた声を張り上げ睨みつけてくる少将の双眸は淫らに潤み、常の厳しさは一切見られない。  心の奥底までをも容赦なく見透かす聡明な光さえも居所を失っていることに密かに安堵しながら、詫びを込めてゆっくりと肉を揉めば、  すぐに美貌のかんばせがとろけてゆく。乳房を揉んでいるだけだというのに、本当に感じやすい。  普段の豪胆で自他共に厳しい姿を知っている分、肉の悦びに溺れ男のなすがままになる少将は酷く可愛らしかった。……苛めたくなるほどに。 「そうは仰いますが少将、ここの締め付けは一層キツくなりましたが。失礼ですが、痛くされて悦んでいるのではないですか?」 「冗談はよせ……ッ、ああぁ……!」  紅に彩られた唇には不似合いな文句を、乳房の頂きで真っ赤に熟した果実を可愛がることで封じる。  指の腹で硬い乳首を転がす度に金糸を振り乱し肉体をしならせる彼女の艶かしさに腹が熱くなり、スプリングのきいたベッドを  盛大に軋ませ蠢く膣内を思い切り突き上げた。互いの肌がぶつかる破裂音に重なり響いた破廉恥な喘ぎと、急激に締まる膣で彼女が早い絶頂を  迎えたことを知ると同時に、まるで咀嚼するかのような膣壁の圧迫が襲い掛かってきた。凄まじい快楽をもたらす刺激に奥歯を噛み締め耐えるも、  眩暈を起こすほどの最高の締め付けにどうしようもない吐精感が喉元をせりあがり、内なる雄の欲望が暴走を始める。  気遣う余裕もないまま大腿に指を食い込ませ二度、三度と断続的に女の中を抉っては奥深くまでペニスを潜り込ませた果てに、  淫らな誘惑を仕掛けた肉に熱い欲望をぶちまけた。たまらない解放感。女の腹を白濁で汚すという征服感を伴う射精の快楽に  しばし身を委ねながら、ペニスに纏わり付く膣の熱い泥濘の心地よさに、今更コンドームを使用していなかったことに気付く。  なだれこむように始まったセックス。避妊のことさえ考える間もなかったとはいえ、セックスを覚えたての子供でもあるまいし、  せめて外に出す事は可能だったはずだ。有り得ない失態に忸怩たる思いに駆られながらも、腰に跨ったまま瞼を閉じ呼吸を整えている  美しい女が相手ならば致し方ないかと考えた矢先、力なく倒れこんできた柔らかな身体を咄嗟に抱きとめた。 「大丈夫ですか、少将?」 「お前、中で出したな……大層遊んでいるくせに、情けないな……マスタング」  熱い吐息が肌に触れる至近距離、気だるげながら眉宇を顰め厳しい眼差しを向ける少将は美貌に見入る隙を与えてくれない。  しかし彼女は知らないようだ。いくら睨みつけたとて潤む瞳や上気した頬のままではむしろ欲情を煽ることを。  居丈高な態度は内なる雄の本能を刺激して組み伏せ泣かせてしまいたくなることを。  ブリッグズを治める女王様も軍服を脱げば一人の女であることすら知らない彼女の「隙」に、酷く苛立ちを覚える。  それがなにゆえか、突き止める余裕すらなかった。 「何の断りもなく出した事は謝りますが……中に出したことを怒るくせに、身体は未だに熱くココも私のモノをくわえ込んで離さない……  あなたは中に射精されて、興奮しているんだろう?」 「なにを……むぅ……んんッ!」  彼女の後頭部へ手を回し文句を紡ごうとする唇を塞ぎ、すぐさま熱い舌を絡め取ると美しい海の瞳が見開かれ離れようともがき始めた。  先程まで股を開いて尻を振っていた癖に、髪を引っ張りキスから逃れようとする女が気に食わない。  繋がったまま無理矢理押し倒す形に体勢を変えながら深く口腔を抉り、硬度を保ったままのペニスを抜ける限界まで引き抜き一気に突き入れた。 「んんんぅッ!? いやだ…ッ、やめろマスタングっ、これは命令だ……!」  背を反らして身悶える彼女の身体は美しい。  無造作に床で散らばる、今は主を失った軍服を燃やして一人の女であることをしらしめたい程に。 「イエス、マム……なんて、言うとお思いですか? 軍服を脱いだ時点であなたはアームストロング少将ではなく、ただの女でしかない」  たっぷりと堪能した唇を離れ、彼女の唾液を纏う舌先で耳朶をくすぐりながら囁く。囁き一つで震える腕の中の女が、何よりモノ証拠だ。  だが、彼女は軍服を着ているからこその魅力なのだろう。  何物にも靡かない、例え強大な権力を前にしたとて己を信じ媚びないだろう彼女を、振り向かせ懐柔したくなるのは男の性が、それとも―― 「くそッ……、ああぁっ……お前は、気にくわん……ッッ!」 「その気に食わない男に抱かれてしまうあなたは、思いのほか慈悲深いのですね」  烈火の如き怒りを秘める瞳は今、欲の海。どれだけ強く燃え盛ろうともすぐに消えるだろう。  時刻は零時。夜の帳が上がるのはまだ先のこと。  どれだけ突き上げれば堕ちるのか、想像を試すには十分な時間がある。  哀れに啼いて身をくねらせる女か、力のままに犯す男のどちらに天が味方しているのか、明らかだった。                                            「adult」H21.12.15

 

戻る

Copyright (C) sample+ren. All Rights Reserved.